※このプレイ日記は2016年1月19日に後援者のボルカノさんが製作したものです。




第1594弾





SDガンダム
Gジェネレーション-F.I.F



PartB












元ボルカノ軍の脱走兵、舞夏梨によるナギ家の領海侵犯。








この一件に端を発する輸送艦 許攸(きょゆう)追撃作戦は、

許攸より出撃して来た二機のズゴックに阻まれる形で、失敗に終わった。









戦いが終わって、ボルカノの手に戻ってきたものは、

彼の配下である負嗣によって撃破された、その二機のズゴックと、

かつて、ボルカノの信頼を受けた一人のパイロットだけであった。


しかし、ボルカノはそのパイロット……二見 和也を自らの陣営に護送すると、

隊員たちを集め、彼を死刑に処することを発表したのである……。









隊員たちはどよめきの声を上げ、その場に明らかな動揺が走った。












どういうことだよ!おい!



二見か?



そうだよ!なんで殺すんだよ!わけが分かんねえよ!



わけ?初めに言ったじゃねえか。

脱走兵が出てからというもの、ウチの評判はずいぶん下がった。



評判がなんだよ!んなもんはどうにでもなるだろ!



どうにでも?どうやって?



戦って晴らすんだよ。身の潔白ってやつをよ!



確かに。まあな。身内にはそれで通じるだろうさ。

だがな、身内だけなんだよ。それで分かってくれんのは。

例えば、脱走兵がまた出たらどうだ?あの女と同じような奴が出て、

よそに迷惑をかけ始めたら?俺たちのツラ汚しが増えたら?



そりゃ……。



……消される。ボルカノ軍のおしまいよ。

その時は……殿下か、蒼皇さんかな。どっちが粛清しにくるやら。



くっ、くそぉ!



そんなのは……嫌だ。

だから、やるんだ。俺は、俺の軍団を消させない……。








ボルカノの負嗣への態度はしかし、見栄であって、明らかに格好を付けていた。

この後、二見が押し込まれた部屋……言わば留置場の手前に立ったときには

何度もそわそわとしていて、まったく落ち着きがなかったものだ。












二見、入るぞ。










なんだ、アンタか。



相変わらず肝っ玉の据わった奴だ。俺は殺すと言っちまったのに。



こういう性格なもんでね。ひねくれ過ぎた。



実はあれからお前をどうするか考えた。

まだ、方法があるかも知れない。お前を生かすことが出来るかも知れない。



どんな?



よし、よく聞け。今回の一件はだ、被害を受けたのは関西のナギ家だ。

だがな、俺をはっきりと恨んでるのはナギタンだ。

だから、奴の機嫌をどうにか出来ればいい。なんとかなりそうなんだ。



ふーん……。



機嫌を良くするのに、お前を斬る以外ないわけじゃない。

俺がお前をナギタンの元に送って、あいつの下で働くんだ。

お前ほどの男なら、必ずあいつの目に止まる。な?



断る。



お、おい?












奴の元で?奴のためにだと?

ふざけろ。俺は人間だ。豚に下げる頭はない。



我慢だよ。我慢。人間、我慢が大事なんだ。

そこをちっと我慢すれば、お前、死ぬ理由はなくなるんだぞ。



ああ、我慢は大事だとも。それは分かるね。

……だが、アンタが考え方を変えろと言うなら、俺は言い方を変えようか?



なに?



俺は尻軽じゃない。上司をころころ変える趣味はない。



くっ……。



分かったか?死に時なんだよ、ここらへんがな。



理解出来ん!お前の考え方は頑固という問題じゃないぞ!

そんなに意地を張ってなんになる!



さぁ?たぶん、なんにもならないんじゃないか?死ぬんだから。



ええーい!!だから、なんにもならんから、

あとでなんにもなるようにしろと、俺は言っておろーに!



ははは。



笑えるか!



ははは……いや、悪い。それよりもさ、俺はもう良いんだが、

俺の親は……俺が死んだあと、どうなるんだ?



 親の歳は、いくつだったか?




親父が67。母さんは65。



任せろ。あとの面倒を見るなら、見込みのあるやつがいる。

それより、だな。













さっきの……ナギタンを豚と言うの、あれやめろ。



ああ?なんで?



俺は豚肉が好きだ。豚は所詮、家畜で殺されるために生きている。

だが、豚なくして人間の生活は支えられない。

見下すと同時に、尊敬している。だから、相応しくない。



くっ、あはははははは。

なんだ、そりゃ?バカか?バカなのか、アンタは!



笑えるか?別にギャグで言っちゃいないんだけどなぁ。










二人はしばし、談笑を続けた。

気の向くまま、どちらも態度をへりくだることも、飾る様子もなく、

ただ、ただ、思いのままに好き勝手に話をし続けた。

それでも、二見の処刑はもはや避けられない事であった。


結局、ボルカノは、その日の内に二見 和也の処刑を正式に決定し、

その決行の日は二日後の明朝6時として、予定が取り決められていった。



執行の始めはまだ、日が浮かんだばかりだったので、

空が暗かったこともあったかも知れないが、

処刑場は嫌が応にも物々しさをたたえて、空気を重く変えていた。


このような中でも二見は、涼しげな顔色で隊員たちの視線の中を歩き、

ボルカノの前に悠然として、進み出たのである。

その頃にちょうど空が明るくなってきていたので、

最初の物々しい光景は一転して、今度はある一種、

神妙とか、神秘的とさえ思わせるものに変わっていた。










これは私物の剣だが、こんな形で使うことになるとは……。









斬首刑か、古くさいやり方だ。













……ギロチンは、良心的な処刑の器具だったんだ。

そうでなくとも、もっと大きな戦斧でもあったなら……。



さっさとやってくれ。こっちは楽に死にたいんだ。













くっ……!

執行人、分かっているな!俺が万が一、一撃で斬れなかったら、

こいつをすぐに撃て。うめき声一つ上げさせるな。



いいからやれ!



お前ってやつは!……だが、最後に一つだけ聞かせろ。



なんだ?












……舞夏梨だ。羽田舞夏梨のことだ。

あいつが生きてる以上は、俺とどっかで戦うことになるだろ?

もう一回、出会ったとして、お前の希望ぐらい聞いておきたい。

なんだ、なにがだ?

生かすべきか、殺すべきか。お前ならどうする。



この期に及んでまだそんなことか。アンタの好きにやりゃいいだろう。



うっ……ま、まったく、立派な野郎だ。

い、いいか……!?やるぞ!



やれッ!






その瞬間、風が止まった。辺りには何の音もなく、ひたすらな静寂だけがあり、

ただ一人が深呼吸を始める音だけが支配していた。

その後にボルカノが獣のように雄叫びを上げて、剣を振り上げた。










そして、三つ。三つの音がした。

風を切る音、断ち切る音、何かが転がり落ちる音。


その後、ボルカノがゆっくりと地面を見下ろすと、身をこわばらせ

ぶるぶると震えるながら、立ち尽くした。

そして、突然、その場から崩れるように膝まずいて、泣き出した。










すまない、すまないと何度も謝り、頭を下げ続ける。

しかし、彼が頭を下げて詫びるべき相手はどこにもいなかった。

もう、眠りについていたのだ……。彼の魂の在処など、誰も知らない。

誰もが重い溜息をついた。すべてが終わったと分かったからだ。








二見の体は遺族の元へと送られたが、首だけはナギタンへと送られた。

このことによってナギタンはボルカノが責任を取ったことを認めたが、

その首も間もなく謝罪の手紙とともに、遺族の元へと送り返された。










これは一家の当主であるナギの計らいだった。

彼は聡明な人だったので、よその首のために、世間から悪く言われることを予測し、

後の遺恨を残さないようにしたのだと言われている……。










こうして、ナギ家の領海侵犯に端を発する一連の事件は、

二見 和也という人間の死をもって、一つの終結を迎えた。


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